役割不安が強く、人間関係における危険にばかり焦点を当ててしまうと、意見や気持ちを分かち合ったり、一緒に笑い合ったり、新しい人と出会って刺激を受けたり、というポジティブな側面を逃すことになります。

この状況から抜け出すためには、人と触れ合うときに感じる単純な喜びに目を向けていくことが役立ちます。

人間は社会的動物ですから、他人にほめられれば嬉しいものですし、お互いの気持ちに共感し合うことができれば温かい気持ちになるものです。

また、自分が関心を持っていることに他人も関心を持ってくれれば仲間意識が芽生えるでしょう。

どうしても一歩を踏み出せないときに誰かが親身になって励ましてくれるとやる気になったりします。

これらのことを素直に感じられない人は、「自立している人間は、他人から支えられる必要などない」とどこかで思い込んでいることが多いものです。

これも、身近にそういうメッセージを発している人がいた場合が多いです。

「人からほめてもらえないとうれしくないなんて、なんて未熟なことだ」と批判されたり、「自分が本当に関心を持っていることなら他人がどう思おうと気にならないはずだ」と批判されたり、「自分が本当に関心を持っていることなら他人がどう思おうと気にならないはずだ」と言われたり、「他人から励まされなければやる気にならないなんて、甘えている」と言われたりしてきているのです。

しかし、これもまた必ずしも正しい情報とは言えず、人間は他者とのつながりのなかに喜びを感じるのが当然なのです。

とても緊張するスピーチですら、自分の気持ちを人と分かち合おう、というところに意識を集中させると、緊張が和らぐものです。

タロウさんのケースのように、相手に伝えるということに集中すると社会不安障害の症状ですら気にならなくなる人がいることは事実です。

※参考文献:対人関係療法でなおす社交不安障害 水島広子著